メモ : Smashing the Liquor Machine A Global History of Prohibition

原著しかないのでしかたなく英語で。うん…この内容だと日本語訳はこれからも出ないでしょうね。内容のメモ。

題名の直訳「蒸留器をぶっ壊す 禁酒法の世界史」

著者というか読んだ自分の意識も、禁酒法について、お酒が体に良くない影響があるかもしれないとうっすらわかってきたのが19世紀末、体に悪いと確実に言えるようになって来たのがWWII後でしかないのに対して、禁酒運動はその遥か前から存在していた。なら、お酒と健康の関係性が明らかになる前の禁酒運動のモチベーションは何であったのか。ちなみに禁煙運動はタバコの害が判明するとほぼ同時期に始まっている。

(宗教的な理由を除けば)著者はそれを反政府運動にあると分析し、19世紀の前半には政府の収入の10-20%を酒税が占めており、それこそ資本家を打倒すべて労働者層が、呑兵衛として多額の酒税を支払い、資本家の地位を支えるという歪な構造に対する抗議であったとする。

レーニンは著書『ロシアにおける資本主義の発展』のセクション全体は、蒸留がいかに農民を犠牲にしてウォッカ製造業者に力を与えたかを説いていた。 ツァーリの財務大臣セルゲイ・ヴィッテが帝国のウォッカ独占を復活させたとき、レーニンは、それが貴族階級の蒸留所と独占小売業者としての国家を富ませるだけで、「何百万人もの農民と労働者を永久に束縛する運命にある」と予測した。

MARK L AWRENCE SCHRAD, Smashing the Liquor Machine A Global History of Prohibition

現在のアルコールの摂取量を減らして健康維持というテーマではなく、20世紀以前の禁酒運動の多くは製造販売側(酒税納税側)に対して行われ、対象となるお酒も税率の高い蒸留酒となることが多かったようだ。

そのためにある程度禁酒運動が成功した国、ドイツやベルギーの今の姿を、お酒に対する節制ではなく、低アルコール(ビールなど)飲料の発達として観察できる。広まらなかったイギリスやロシアは今でも蒸留酒で酔っ払っている。

確かに、アメリカの禁酒法時代に反対していた禁酒法条項反対連盟(Association Against the Prohibition Amendment)のパンフレットを読んだ時、そこにはお酒は百薬の長といった主張がされているのかと思えば、そうではなく、経済効果と禁酒法の負の影響(禁酒の負の影響ではない)がメインのトピックであった。これが禁酒運動に対するカウンター運動であれば、禁酒運動が「アルコール摂取」を論点にしていなかったことは明らかだろう。

*女性全国禁酒法改革協会(Women’s Organization for National Prohibition Reform)の主張は面白い。本来は両親、特に母親が自分の価値観に基づき、わが子に対して、自分の責任で行動を選択すること、「個人の自由は個人の責任を意味する」ということを教育しなければならないのに、禁酒法は強制的にその機会を奪ってしまっている、つまり政府が、子どもたちに善悪の判断や決断力を養わせる自由を家庭から奪い取っている、という主張である。(寺田由美,全国禁酒法と20 世紀アメリカ社会,2019)

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2022年3月より、東京から引っ越し熱海市の古家で田舎暮らしをスタート、月13万円生活で・ω・金持ちいわく、年収200万未満は地獄らしい。私の年収は156万円(2023)、これをどこまで減らせるか、経済的なミニマム生活に挑戦。

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